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熱心に改善活動に取り組んでいるのに思うような成果が出ない要因
業務改善の重要課題となる生産性向上において、多くの組織では、まず「現場」から、と考えがちです。しかし、そもそもその「現場」での改善活動を徹底する力が「組織」に備わっていないと、成果を得ることはできません。
改善活動を徹底できない組織では、いくら改善をしても時間の経過とともにリバウンドしてしまい、結果的に効果は一時的となり、長期的な生産性の向上にはつながらないのです。
以前、現場改善に熱心に取り組んでいる割にはなかなか成果がみられない企業において、過去の改善の成果がどれくらい定着しているかを調査したことがありました。 活発な活動の割には損益計算書に動きが少なく、現場を歩くと、改善が定着していないように感じられたからです。調査の結果、改善提案の定着率は約30%でした。中身を分析してみると、品質不良に関することについては定着していたものの、整理・整頓や職場のルールなど、いわゆる5Sのような基本的なことがなかなか定着していないということがわかりました。来客や社内のイベントなどの前に一夜漬けで整理・整頓やルールの再徹底を行なっていたため、 改善活動が定着せず、成果が一時的になっていたのです。
リーダーが変わる度に振り回される現場
改善活動を徹底する組織をつくるためには、定着するまで一貫して指摘し、改善策の働きかけをし続けることができる管理職やリーダーの存在が不可欠です。
しかし、組織の中で、現場の管理職が一貫性のある指摘を行うことは難しいのが実情です。それは人事異動により人が変わるからです。本来であれば現場の管理は、人が変わっても大きく変えるべきではありません。 しかし実際には現場の管理職は自分の仕事を自由に組み立てられるため、自分の好き嫌い、得意不得意で仕事をしてしまい、その結果、現場の管理が変わってしまう、ということが起こります。 例えば、現場の作業が好きな人、得意な人は現場の管理そっちのけで現場の応援に入ってしまう、事務作業が好きな人、得意な人は事務所にこもりっきりとなってしまう、といったことが起こります。パソコン業務が不得意な管理職が、それまで収集、分析していたデータ収集をやめてしまう、ということもあります。管理職の好き嫌い、得意不得意で管理業務が大きく変わることで、振り回されるのは現場です。管理職が変わるたびに、管理職の指摘するポイント、やり方が変わるため、余計な業務が増えたり、継続すべきことをやめさせられたりします。その結果、改善活動は現場で実行されなくなり、それまで培ってきた効果は得られなくなってしまうのです。
組織の徹底力を磨くには
このようなことを防ぎ、組織の徹底力を磨くためには、人が変わっても管理のやり方が変わらないような仕組みを作ることが重要です。まずは管理職の業務、組織としての業務を定義したものを見える化し、そこからやるべきことをリスト化し、マニュアルを作成するのです。これらを管理職の業務として引き継いでいけば、管理職のやるべき業務は標準化されます。
具体的に管理すべき項目は、朝礼、現場巡回のルート、現場の目標設定、応援の調整、OJTなどが挙げられます。そして、これらの項目についてマニュアルを作成していくのです。
たとえば「現場巡回」の項目では、「ルート」と「やり方」をマニュアルによって明確にします。そうすることで、現場に行くのが嫌いな人も「業務」として現場に行くようになります。さらに、マニュアルがあることで、たとえ管理職が変わっても、同じように現場巡回が行われるため、継続して現場に改善活動について指摘し続けることができるようになります。このように管理職が変わっても一貫して継続的に現場に指摘することができる仕組みを作ることで、改善策は定着し、成果に繋がります。
現場改善の徹底は管理職と現場の根くらべです。現場に対して、できるまであきらめずに管理職が指摘し続けることが徹底力の強化になります。管理職が現場に指摘する行為を、属人的に管理職の意識や意欲に任せるのではなく、「業務を標準化」し、仕組み化することが重要なのです。