5S活動とは、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketu)、躾(Situke)のことです。様々な業種でその重要性を知られている5S活動ですが、「本当に利益につながるのか?」と懐疑的な見方をしている方も少なくないことでしょう。そこで今回は、5S活動推進による具体的な効果をご紹介します。
目次
収益改善の基本は5S
収益力向上には現場改善が必要ですが、その基本となるのが5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)です。5S は職場をきれいにする活動と思われがちですが、これは誤りです。5Sの効果は、モノを定位置で管理することによって、モノを探す時間を短縮し、生産性を上げるところにあります。
ある調査によると、平均的なビジネスパーソンは、1日8時間換算で1 年間に19日間、労働日数のおよそ1 カ月分の時間をモノ探しに使っているといわれます。5S でモノを定位置化すれば、この探すムダを削減することができます。実際に、私が支援したクライアントの中には、5S を徹底しただけで、2桁の営業利益率を達成した例もあります。
訪問型のみのコンサルティングの限界
これまで、コンサルティングは「月に1回コンサルタントが訪問する」という形式が一般的でした。コンサルタントは、前回の訪問から次回の訪問までの1 カ月間の成果を現場で確認した後に、さらに良くするための助言を行います。そして、クライアントは、助言を参考にしながら次の訪問までの実行計画を立て、改善を行うという流れです。つまり、1カ月に1回のPDCA サイクルが回ることになります。
PDCA サイクルを成果に結びつけるには、1つのPDCAサイクルの質を向上するよりも、PDCAを回す、もしくは(回転の)スピードを重視した方が良い結果につながります。なぜならば、現場の改善は、いくら頭の中で完璧に考えても想定外のことが発生し、現場での修正が必要になるからです。これまでの訪問型のみのコンサルティングでは、契約月数のPDCA サイクルを回すことができました。6 カ月の契約であれば6回、1年の契約であれば12回です。
クライアントによっては、PDCA サイクルを高速で回したいとの要望で、週次で報告をいただくこともありますが、これが長く続くクライアントは少ないでしょう。なぜならば、1週間の活動を報告書にまとめ、コンサルタントに送付することに時間がかかり、改善に使う時間が少なくなってしまうからです。訪問回数の頻度を増やすという手もありますが、それではコンサルティング費用が高額になり、投資対効果が小さくなってしまいます。
そのため、コンサルタントが訪問するまでの1カ月間は、改善グループのリーダーに託すことが一般的でした。しかし、リーダーに託すと、リーダーやメンバーの能力、職場の人間関係など、さまざまな要因で進捗が滞り、各グループの成果にばらつきが出てしまうことがよくあります。
特に5S 改善は、小まめにアドバイスできれば、改善のスピードが上がり、成果が上がることは過去の例から明らかです。しかし、訪問型のみのコンサルティングでは、その成果がリーダーや職場の状況によって変わってしまいます。
スマートフォンで改善を加速
「スマートフォン」と「クラウド型のアプリ」を活用することで、月1回のPDCAサイクルを月4回に増やし、5S改善のスピードを上げることができます。
5S 改善のコンサルティングでは、改善の計画を立案し、実行し、実行した結果を改善前と改善後の写真を添えて報告します。報告のために、デジカメで改善した箇所を撮影し、ワードやエクセルなどの定型書式に貼り付けて報告書を作成します。この報告にスマートフォンとアプリを使うことで、PDCA サイクルを月4 回に増やすことができるのです。さらには、報告書作成にかかっていた時間を大幅に短縮することもできます。
スマートフォンのカメラを使って写真を撮影し、取り組んだ5S 改善をアプリに登録します。登録されたデータは、インターネット上のサーバに置かれるので、登録するとすぐにコンサルタントは改善内容を見ることができます。コンサルタントが週に1回、改善内容を確認しフィードバックを行い、このフィードバックを次の改善計画に組み込むことで、さらに良い改善に取り組むことができるのです。
また何らかの理由で5S 改善が止まっているチームには、コンサルタントがフォローし、進捗の遅れを防ぐことができます。現在、このような「スマートフォン」と「クラウド型のアプリ」を5S 改善に取り入れて2年目となりますが、改善のスピードが格段に速くなったと感じます。
改善事例:金属加工会社
最後に支援の事例をお伝えします。金属加工のD社では、1年後に工場の大幅なレイアウト変更を予定しており、その準備として5S改善を計画しました。
実は、以前、5S 改善でコンサルタントの支援を受けたことがあったのですが、一時的に整理整頓が進むものの、支援が終了して半年後には元どおりになってしまいました。過去のコンサルティングを振り返り、D社の社長は、改善したのち、使いにくかったら、さらに改善するという「改善の改善」が足りなかったことがリバウンドの原因と考え、お声がけいただきました。
4 〜5 人を1 チームとしてチーム編成を行い、各チームの目標は「週3件の5S改善を実施する」という数値を明確にしました。数値目標を掲げた理由は、5S 改善を仕事として捉えてほしいとの狙いからです。ただし、質は問わず、どのような改善でもよいということにしました。これは、通常業務が忙しくても、改善への取り組みを続けやすくするためです。
また、週に1 回の職場パトロールもスマートフォンとアプリで行い、リバウンドした箇所は、原因を考えて改善していきました。さらには、目標に届かなかったチームには、コンサルタントとウェブ会議システムを通じて、目標達成に向けた対策を検討しました。その結果、1 年間かけて5S改善を行う予定でしたが、7カ月間でレイアウト変更へのめどがつきました。