5S活動によってコストを削減することができます。ただし、その効果はすぐには現れません。効果が現れ始めてからも、持続させるための一工夫が必要です。
目次
労務費を削減できる理由
5Sによってコストが削減できることを、損益計算書との関係で見てみましょう。
コストの削減のうち、最大の効果として表れるのが、労務費の削減です。整理・整頓が進むと、モノの定位置も決まってきます。すると、探すために浪費されていた時間が、付加価値を高める時間に置き換わります。こうして、仕事の効率が上がるのです。
軽視できない「探す」時間
探すという行為は無意識に行われ、一回あたりの時間も、それほど長くはかかりません。このため、時間の浪費になっていることには、気づきにくいものです。5Sを進めても、大幅な時間削減につながる実感は、わきにくいかも知れません。「5Sでは収益が上がらない」と言われる方もおられます。
でも、探すムダは、仕事のあらゆるところに存在しています。現場を注意深く観察すると、「歩行」や「 打ち合わせ」といった行動に表れています。これが作業時間を増加させ、生産性を下げているのです。
部門 | ムダの例 |
製造部門 | 原材料を探すムダ |
物流部門 | 副材料、仕掛品を探すムダ |
冶工具を探すムダ | |
金型を探すムダ | |
出荷すべき製品を探すムダ | |
管理部門 | 書類を探すムダ |
ファイルを探すムダ |
一般的なビジネスマンは、モノを探すのに時間をどれだけ費やしているのでしょうか。1年間に「150時間」、あるいは「6週間」など、諸説あるようです。
仮に年150時間だったとしても、一日の労働時間を8時間とすれば、約19日分。
会社は毎年、およそ1カ月分の給料を、探す時間に対して支払っている計算になります。あるいは、従業員12人につき1人、探すためだけの担当者を置いているのと同じ。もったいないですね。
労務費の削減効果を得るコツ
5Sのうち、労務費の削減に大きく関わるのは、整理(Seiri)・整頓(Seiton)の2Sです。ただし、労務費の削減効果を得るには一工夫が必要です。
それは、「仕事の割り当ての変更」。2Sを始めて3~6カ月が経過すると、モノを探す時間が減ります。これにより、仕事が何となく楽になったり早く進んだりするようになります。そのタイミングで持ち場替えなどをして、仕事の割り当てを変えましょう。そうしないと、2Sによって捻出された時間が、別の何かに置き換わってしまいます。例えば、作業時間がゆっくりになることです。
2Sで現場がすっきりし始めたら、仕事の割り当て変更を考え始めるポイントです。多くの企業で2Sが労務費の削減につながらないのは、この一工夫がないからです。