せっかく改善案を実行しても、それが習慣化するまでには「抵抗期」「不安定期」という2つの障害が必ず訪れます。
人の脳は「いつも同じ」を好むため、変化することへのストレスから来る「抵抗期」と、おおむね改善が定着した頃にチェックやリマインドを止めてしまうことによるリバウンドが起こる「不安定期」です。
これらを乗り越えるには、作業者の体に染み込ませるまで、管理者が短期間で繰り返しチェックや確認を行うことが重要です。しかしそのチェックも、管理者の熱意や気合だけではなかなか続きません。チェック、確認を継続するための「仕組み」が必要なのです。
今回は、改善案を習慣化するために重要な3つの仕組み①管理指標②習慣化ツール③ほめること、の1つである「管理指標」について詳しくみていきましょう。
目次
【1】改善案を継続させる管理指標とは
管理者はいつも現場にいる訳では無いため、改善案が習慣化しているかどうかが分かるセンサーが必要です。
そのセンサーとして活用できるのが、売上、利益、不良率など、業務の結果としてそして表現される「結果指標」と、1回あたりの作業時間や回数など、結果指標を上げるための手段を管理する「行動指標」です。ではどうやってその指標を決め、計測して行ったらよいのでしょうか。
【2】管理指標を設計するための3つのステップ
人時生産性の改善であれば、「粗利額」「総労働時間」など、改善結果の成果指標を分解することから始めます。分解の切り口はいろいろありますが、「1回あたりの時間×回数」がよく用いられます。
分解した項目と改正案の因果関係を明確にし、因果関係がある指標を管理指標として扱います。
その際に以下4つのポイントを意識してください。
① 現場は理解できる言葉を使う
横文字は避け、直感的にわかる言葉を使いましょう。
②努力が反映される
自分たちの努力が見えないとやる気を失ってしまうため、現場が自発的に追加して行った作業改善など、現場の努力が結果に反映される目標を設定しましょう。
③絞る
欲張って管理指標を複数設定すると、覚えきれず何も意識されないか、優先順位が定まらず、それも中途半端になってしまうため、最大3つまでにしましょう。
④勝ちに焦点
負け越しが続くと、「どうせできない」という諦めが生じて改善が定着しない場合があるため、勝ちに焦点をあて、「なぜできたのか」を分析し、勝率を上げていきましょう。
扱う項目が決まったら、どのように管理指標を計測するか検討します。管理指標の計測のしかたは、各メリットデメリットがあるので、状況に応じて以下の図を参考にしてください。
管理指標は、管理者や一部の人だけが見るのではなく、全員で共有し、確認していくことが習慣化につながります。また、管理指標は鮮度が命のため、今日の結果は今日振り返ることが重要です。
以下のようなフォーマットに作業が終わる毎に記録させたことで、現場の時間に関する意識が高まり、他の作業改善もスムーズに進んだ、という事例もあります。
【3】ぶら下がりをなくし、チームの力を発揮させる
人は集団になると100%の力を発揮しなくなるため、職場の人数が多くなればなるほど「ぶら下がり」が増えます。ぶら下がりが増えるのは、自分の努力がチーム全体の成果に影響を与えないと感じたり、チーム全体の成果が自分の報酬に跳ね返ってこないと感じることが要因です。ヤマト運輸の瀬戸会長は、「人の力を引き出すには『少数精鋭』がポイントである」とし、拠点数を多く、1拠点あたりの人員を少なくすることで、自分の力がチームの成果に与える影響が大きくなる仕組みを作りました。また、職場の目標を拠点毎に設定、成果を見える化し、現場の努力で数字が変わるような評価制度にしたことで、一人ひとりが手を抜くことなく努力し、生産性向上につながったということです。
一方ある会社では、社長の希望で個人別に行動目標を設定したところ、生産性の向上した層と低下した層に分かれ、全体の生産性が微増に終わった、ということがありました。これは、一部の従業員が「どうせできなくても自己責任だし」と開き直ってしまったことが要因だったため、チームの人数を3〜5人にし、他の人からアドバイスをもらうなどして助け合える環境に変更したところ、目標達成できなかった層も次第に生産性が向上した、という事例もあります。
いずれにせよ、現場がわかりやすく、取り組みやすい管理指標を設定し、チームで助け合える環境をつくることが改善を継続するために重要です。是非あなたの現場で取り入れられることから始めてみてください。