新入、中途社員の入社や人事異動の際、必ず発生する教育訓練。
教育訓練のコスト算出は簡単ではありませんが、人の入れ替わりの際に必ず発生するので、膨大にかかっていることは間違いありません。
さらに、せっかく教育したのに思ったように人材が育たず、お困りの経営幹部も多いことでしょう。そこで今回は、教育コストを一気に削減する、無料ツールについて詳しくご紹介します。
目次
「先輩の背中を見て覚えろ」はもう古い。たった1年で一人前の左官職人を育てる方法とは
人材育成がうまくいない企業が多い一方、短期間で人材を育て、現場に送り出している企業もあります。
たとえば、ある左官工業社では、通常一人前になるまで5~6年かかるといわれる左官職人への教育を、たった1年で行っています。
とかく職人の世界では、先輩の背中を見て覚えろ、という風潮があります。しかしこの左官工業社では、自分と、手本となる熟練職人の作業の動画を見比べながら、壁塗りのやり方を修正していく「モデリング」という手法を取り入れることで、短期間で技の伝承を成功させているのです。
このように、時代にあった教育方法を構築することで、人材育成を早めることができます。
「最近の若者は……」と嘆く前に、OJT教育を含む、自社の教育訓練の見直しが必要なのです。
人を育てるカギは「業務の標準化」と「マニュアルの整備」
教育訓練の方法を見直す際、「何を」「どのように教えるか」を教える側が理解していなければ全く効果がありません。そのためには、「業務の標準化」と「マニュアルの整備」が重要です。
標準化された仕事のマニュアルがあれば、それを教科書として使うことで、漏れなく、誤りなく、教える人が違っても同じ内容を伝えることができます。しかしながら、業務の標準化とマニュアルの整備は手間がかかることなので、しっかりと作成している企業は少ないのが現状です。逆にいうと、作成している企業が少ないからこそ、実施することで差別化につながります。
教育内容が確定したら、どのように教えるかを明確にします。すべてを現場で体験するというのは非効率なため、まずは、その仕事を行うにあたっての基本知識や仕事の全体像、流れを頭に入れてもらいます。その後現場で詳細を教える、という流れにすると、仕事の全体像が頭に入っているため、理解が早く進みます。
基本知識や仕事の全体像、流れについては、教える内容は毎回同じなので、動画に置き換えることで、教育にかかる時間の短縮となり、教える内容がブレません。
YouTuberだけじゃない!教育の現場にも動画が必須
作業のやり方や接客の仕方など、現場での動きがポイントとなる仕事は、紙のマニュアルで教えるよりも動画で見せたほうが伝わります。
動画というと難しそう、と思うかもしれませんが、今は撮影、編集、視聴までをスマートフォン1つで簡単に、しかも無料でできるアプリやソフトが充実しています。
iPhoneの場合は、iMovieかKineMaster(キネマスター)、Android端末の場合はKineMasterという無料で使える動画編集ソフトがオススメです。これらのソフトの操作方法は比較的簡単で、インターネットで検索すれば使い方の動画もありますので、そちらを参考にするとよいでしょう。
編集した作業動画は、YouTubeにアップロードすることで、社員はどこからでもアクセスすることができるため、簡単に共有することができます。ただし公開する際は、「限定公開」に設定し、対象社員以外はアクセスできないように注意しましょう。
さらに、動画URLのQRコードを作成することで、より簡単に共有することができます。QRコードは、無料で作成できるWebサイトが多数あるので、そこでQRコードに変換し、紙などに印刷するだけです。
無料でここまでできるのですから、導入しない手はないでしょう。
パソコン作業のマニュアルは◯◯がポイント
パソコンでの作業は、パソコン画面をスマートフォンで撮影すると、画面が反射したり、カーソルが見えなかったりと困難なため、作業画面をそのまま録画できるビデオキャプチャーがオススメです。
初心者でも簡単に使えるビデオキャプチャーソフトは、Bandicam(バンディカム)です。無料版は撮影された動画の上にBandicamのロゴが入ることと、撮影時間に制限があるという制約がありますが、社内のマニュアルであれば無料版の機能で十分です。
パソコン作業の動画マニュアルを作るポイントは「何をしているのか、の解説を入れること」です。
たとえば、「XXXXのファイルを開きます。次にYYYYの欄に名前を入力します」といった具合です(Bandicamは録画しながら音声を入れることもできます)。
パソコン作業のマニュアルは、デスクで視聴することが多いため、他の社員への配慮などから、音声付きの動画は避けられる傾向があります。そのため、作業の解説をこまめに入れ、音声なしでも理解できるような動画作りが大切です。
実際に弊社で作成した動画がありますので、よろしければ参考にしてみてください。
「新規営業を開拓するための顧客リストの作り方マニュアル
人の入れ替わりの激しい企業こそ動画教育の導入を
これまでご説明してきた、動画による社員教育を取り入れたことで、教育時間の大幅な短縮と、生産性の低下抑制に成功した企業があります。
ある倉庫内で仕分けをしているC社は、学生のアルバイトや主婦のパートを数多く雇用しているため、人の入れ替わりが激しく、毎年約30%もの入れ替わりが生じます。特に3月の卒業や人事異動の時期はその傾向が顕著で、毎日のように社員が1から指導していたため、社員の大きな負担と、教える社員による内容のばらつきが問題となっていました。
しかし、最初に仕事の基本知識と作業の流れを動画で学び、その後現場でOJTを実施するという教育方法を実際に取り入れたことで、教育時間の大幅な短縮となり、教育内容の標準化によって生産性の低下を抑えることができたのです。
いかがでしたか?マニュアルの作成は、最初は大変ですが、一度作ってしまえば、その後の教育が本当に楽になります。ほとんどが無料で使えるツールばかりなので、ぜひ導入してみてください。