製造・販売会社であるA社は、工場現場の課題解決ができる人材の育成を目指し、本社主導ではなく工場現場が主導で積極的に研修を行っていました。しかし、社内の自前講師ではなかなかうまくいかなかったということで弊社が研修を行うことになりました。そこで実際に、若手、中堅、リーダー、の3層に行った研修のねらいや内容、ポイントなどを詳しくご紹介します。
目次
若手社員には「なぜ」を伝える
若手社員(入社1から3年目)への研修は、勉強のくせをつけさせること、将来の管理職の予備軍であるリーダー層の強化を図ることを目的に、技術研修を大きく2つのテーマに分けて行いました。1つめは「安全と改善(全4回/90分)」もう1つは「品質とコスト(全6回/90分)」です。この研修では、「仕事の意味をしっかり伝えること」を重視し、なぜ朝礼をしているのか、なぜ安全が大事なのか、今あるものがなぜそうなっているのかなどを丁寧に説明しました。
コミュニケーション研修は現場目線で
中堅社員(入社6年目から10年目)には、工場ならではのコミニュケーション不足や食い違いを防ぐことを目的に、コミュニケーション力向上研修(全6回/90分)を行いました。朝礼や挨拶など、工場で普段行なっているコミュニケーションを題材にしたファシリテーションやコーチングの手法を伝えるだけでなく、職場で起こっている問題について、各自が期間中に改善に取り組み、結果を発表する場も設けました。
「自分がやる」リーダーを育てる
以前はリーダー(職場リーダー層)への研修は行なっていませんでしたが、本当にできる人間が管理職になるような仕組みを作ることも目的に、「仕事と人のマネジメント」と「コミュニケーションの基礎」についての研修を行いました。また、研修で学んだ内容を適用し、各自が設定した「重要業務課題」についての取り組みと結果を発表するフォローアップ研修も後日行いました。参加者からは、「自分の部署をこうしたい」「若手を育てたい」といった積極的な意見が聞かれ、「自分がやらなければいけない」という自覚が感じられるようになりました。
限られた時間で結果を出す研修とは
1回90分という限られた時間での研修で結果につなげるためには、ただ説明するだけではなく、必ず宿題を出して、自分の職場だったら何ができるかと「自分事」としてとらえてもらうこと、事例を入れて極力具体的な内容にすることが大切です。
とはいえ、社員教育は子育てと同じで、投資をしたからといってすぐにリターンが期待できるものではなく、どこでどういうアウトプットが出てくるのかは予想ができないという側面があります。しかし、研修内容の何かに興味が湧き、それが何かのきっかけで社員が伸びることがあります。いい企業というのはそれがわかっているので社員に投資し続けているのです。実際A社では、課長が中心だったプロジェクトチームのリーダーに研修に参加したところ、原価低減などで大きな成果を上げたということで、今後も階層別の研修だけでなく、新製品開発をテーマに研修を予定するなど、継続的に人材育成に力を入れていく方針だということです。
規律と自由で成功体験を
また、社員教育は、最初はある程度強制的にやることも必要です。日々の業務に追われているため、ある程度の規律がないと誰もやらないし、アウトプットがないとなかなかまじめに勉強しないからです。とはいえ全てを規律にしてしまうとギスギスしてしまうため、「規律と自由」のバランスが重要です。「規律と自由」は現場力を高める際にもポイントとなります。改善を軌道に乗せるまでに一定の件数をこなさなければならないという規律を設けつつ、改善の中身は自由とするというような設計が必要です。研修も改善も、小さな成功体験を積み重ねていくことが、次の成長につながるのです。