改善を実行するにあたっては、現場の協力は不可欠です。ヒアリングを通して信頼関係を築かないと、どんなに良い改善案を提案しても実行する際につまずきます。
現場へのヒアリングのポイントで心がけていることについてお伝えします。
目次
1.ヒアリングの場所
現場では元気よく生き生きしているのに、会議室でヒアリングすると、急に無口になったり、本音を話さない方がいます。それは、現場の方にとって会議室がアウェーだからです。一方、ホームである現場で聞くと、安心感からかリラックスして、いろいろなことが聞き出せることが多いです。そのため、できるだけ、重要なことや本当に聞きたいことがあるときは、その方の一番安心できるホームでヒアリングをするようにしています。
ヒアリングする場所としては、喫煙所や休憩室でちょっとした質問をすることもあります。喫煙中や休憩中は、思わず本音が出ることが多く、会議や打ち合わせの場では聞けない貴重な情報を手に入れられるからです。
2.ヒアリングの見える化
ヒアリングの難しさは、何が正確に伝わっていて、何が正確に伝わっていないかが分からないことです。伝えている側は、言ったのだから正確に伝わったと思っています。しかし、聞いている側は、自分のフィルターを通して聞いているので、同じことを聞いても別の意味で捉えていることもあります。このような状態を作らないようにするために、ヒアリングを見える化しています。具体的には、ホワイトボードやA3のコピー用紙にヒアリングしたことを文字に書き出しながらヒアリングを進めていくのです。もし、意味を間違って捉えた場合は、すぐに修正してもらえ、事実を誤認しにくくなるのです。
副次効果として、信頼感の醸成にもつながります。聞いたことを書きだすことによって、ヒアリングをされる側はしっかりと受け止めてくれていると感じてくれるのです。
3.敬意を払う
ヒアリングの際に、相手に敬意を払うことを忘れないようにしています。敬意を払い対応すると、信頼関係が生まれやすくなり、改善が進みやすいです。
経営幹部や管理職の中には「単純作業は誰にでもできる。管理職の方が偉い」という現場軽視の方もいます。しかし、私はそうは思いません。実は、単純作業は誰にでもできることではありません。単純作業を長時間行うことは、精神的な苦痛をともない、忍耐力がないとできないからです。
私もライン作業に入り、ひたすら製品を箱に詰めるという仕事をしていたことがあります。時間が経っても、作業している風景が変わらず、何度も時計を見ては、「まだ、30分しか経っていない」というのを繰り返すばかりでした。頭を使わないで、楽かと思えばそうではないのです。
そう考えると、敬意を払い、ヒアリングを行うのが当然です。
また、企業活動において、製品やサービスを直接創り作り出しているのは、経営者でも、管理職でもなく、地道な業務を繰り返している現場です。それは、ただの入力作業かもしれないし、梱包作業かもしれません。しかし、それらの業務の結果、顧客に価値が提供できるのです。そのことを理解せずに、人をロボットや部品のように考えていては、現場改善は進みません。