改善活動を進める上で欠かせない、けれども継続するのが難しいといわれている5S。今回は、5S活動を効果的に推進するために有効なツールや、スムーズに運用するためのポイントをご紹介します。
目次
5S活動の推進に効果的な9つのツール
5Sを推進するツールは数多くありますが、今回は特に効果的なものを9つご紹介します。
整理する際に使用するツール。
使用状況を見える化することで、不用品の廃棄を促す。
短期間で不用品を一掃するのに有効。
【導入の仕方】
1)職場のモノに赤札を貼る
2)赤札が貼ってあるものを使用した際は赤札を剥がす
3)一定期間経過後、赤札が貼られているものを集める
(赤札が貼られているモノは期間中使用されていない)
4)集められたものの要不要を判断し、不要なものは廃棄する
5)赤札で要不要が明確になった後、棚を撤去したり置き場の表示を変えるなど、スペースを小さくする
(生まれたスペースに別のモノを置かれるのを防ぐ)
モノを減らし、その状況を維持するために現場で共有する廃棄時のルール。
正式な定位置決定前に、リバウンドを防ぐための暫定的な位置表示。
事務用品や副資材の過剰発注を防ぐため、発注時期を定め、見える化する。
【導入の仕方】
1)発注から納入までの期間と発注単位を調べ、安全在庫と発注点を算出
2)発注カードを作成し、発注点につける
3)発注カードがついたモノを使用し始めた時、カードに記載してある数量を発注する
駐車場の要領で、モノの定位置にテープを貼ること。色とテープという視覚的な要素により、誰でも感覚的に定位置を把握することが可能。
⑤と同様、用具や工具の形状を線やスポンジの凹凸で明確化すること。
改善前後の様子を写真に撮り、紙にまとめたもの。
他部署間でも見える位置に掲示することで、コミュニケーションツールや、ノウハウ・アイデアの共有にも役立つ。白黒は効果が半減するため、カラー印刷を推奨。
個人ではなく、組織として5Sに取り組むために、職場単位のやることを一覧にし、共有するためのツール。
PDS(Plan,Do,See)サイクルを回し、計画的、継続的に5Sを推進するためのツール。「いつ、誰が、どこをやる」という最低限の内容とし、現場の負担にならないようにすることが重要。
5Sを継続するポイント
生産性向上のために重要な5Sですが、当たり前のこととして軽視されたり、継続するのが難しいなどの理由から、運用、継続するのが最も難しいテーマの1つでもあります。健康のために運動をしなければならないとわかっていてもなかなかできないのと同じです。そのため、成功体験を積み重ねていくことが非常に重要です。成功体験は主に以下3つの要素を意識しながら生み出していきましょう。
良くなったという客観的な数字と、働く環境が変わったという実感、他人からの評価によって、自分たちの活動が成功体験に変わっていくのです。
利益を高める5Sの進め方
5Sは目的によって適したツールが違うため、まずは目的を明確にすることが重要です。5Sの大きな目的は①利益を高める②貫く力を向上させる、の2つです。
ここでは利益を高める5Sの進め方をご紹介します。
1. Plan(計画)
財務と現場の状況を考え、利益が高まるストーリーを作り、計画を作成する必要があるため、費用の構成比が高く、現場でのモノの管理がルーズなモノから優先的に着手する。管理職やリーダーが中心となって作成。
2. Do(実行)
計画した作業量が適切かを検討しつつ、現場に指示をして実行する。
3. Communicate(共有)
財務の数字や「探す時間が減った」という定性的な成果を共有し、現場に実感させる。
4. Admire(褒める)
目的と評価の基準に相違が生じないように注意しながら成果を褒める。(褒め方のポイントは他記事参照)
貫く力を高める5Sの進め方
利益目的の活動は半年から一年で頭打ちになり、成果が現れにくくなります。そこからは、目的を継続することにシフトし、進め方や判断基準を変えることが、5S成功のカギになります。
1. Plan
自主的に推進できるよう、計画策定から現場に任せる。目標は低く、計画表は簡素に、とにかくハードルを下げることが重要。
2. Do
自分たちで立てた計画に沿って実践できるよう、5S実施シートで見える化する。
3. Communicate
各職場の進捗状況がリアルタイムで見えるようにコミュニケーションボードを作成して共有する。
4. Admire
中身ではなく、計画通りに実施していることを評価することで習慣化する。
5Sがうまくいった事例
5Sの壁は多種多様なため、これまでご紹介したツールやポイントを活用しても、様々な障害はでてくることでしょう。その都度原因分析を行い、一つ一つ対処法を考え、実践していくことが5S、ひいては改善活動成功のカギとなります。ここでは2つの事例をご紹介します。
終業10分前に全員一斉清掃をするというルールを策定したが、徐々にやらない人が出始め、活動へのモチベーションが下がり始めた。そこで、清掃時間に音楽をかけ、やっていない人を見える化したところ、全員が清掃に取り組むようになった。
全員参加で5Sに取り組んでいたものの、管理職の活動が現場からは見えづらかったため、「管理職はなぜやらないのか」という不満が出始めた。そこで、管理職による5S特殊部隊を結成し、現場に入り込んで1箇所を徹底的に行ったところ、不満が消え、活動が活性化された。
継続するのが難しいからこそ、継続できれは他社との圧倒的な差となる5S。あなたの現場でも是非取り組んでみてください。