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5S活動の前にすべきこと
改善は5S活動を行なってから行うのが定石です。しかし、それだけではうまくいきません。実は5S活動を行う前にすべきことが、1つ隠れているのです。それは、「職場のルールの見直し」、「徹底」です。
5S活動も改善も、現在の職場の状態や作業のやり方を変え、ルール化し、それを守っていく活動です。そもそもルールに対してルーズな職場だと、いくら改善をしても一時的な改善で終わってしまいます。まずは、今ある職場のルールの徹底を行なっていく活動が必要です。
職場には就業ルール、朝礼のルール、喫煙ルールなど、さまざまなルールがあり、コンサルティングの際はそれらを確認するようにしています。もし、守られていないようであれば、5S活動と同時並行で職場のルールを見直し、徹底をはかるようにしています。職場のルールの見直し、徹底は簡単なことではありません。このようなシンプルなことほど、徹底するのは難しく、社長、管理職の覚悟と執着が試されます。
ある時、I社の朝礼に参加していると、1割の社員が遅れて来ました。朝礼は、全員参加のきまりになっていました。機械の暖機、遅刻など、理由はさまざまあるにしろ、きまりが守られていませんでした。その結果、全員に連絡事項が伝わらず、再度連絡するなどのムダや連絡漏れによるトラブルが発生していました。
職場のルールを確認していくと、喫煙場所が守られていなかったり、休憩時間を過ぎて職場に戻ってくる者がいるなど、現場にはルールというものが存在していないように見えました。この事態を重く見た私は、社長、管理職と相談の上、職場ルールの見直しを行い、徹底をはかっていきました。休憩時間や昼休みに職場を見まわり、指定されていない箇所での喫煙は注意し、徹底的にルールの定着を行ないました。
そんなあるとき、スキルのあるベテラン社員が、指定されていない場所で喫煙していることが判明しました。社長と私はルールを遵守するように注意したところ、ベテラン社員は「煙草が自由に吸えないならやめてやる。オレがいなくなったら工場が回るのか」と発言しました。
基本的なルールが守れないと、他の改善も定着しないと社長に提言したところ、たった一人のために会社の改善をやめるわけにはいかないと社長が判断し、ベテラン社員には辞めていただきました。当初の1ヶ月は現場の混乱はありましたが、その後業務はスムーズに進みました。
現場改善を行っていると、特定の人の意見が通るような場面によく出会います。お互いが誤解していることもあり、よく話し合うことが必要ですが、それでも会社の方針を理解してもらえないようであれば、やめてもらうような決断も重要です。
たった一人のわがままが通る会社では、改善はできません。5S活動、改善を始める前に、既存ルールを見直しましょう。
整理整頓の理想の姿
整理、整頓のノウハウに関する書籍や記事はたくさんあります。しかし、理想の姿について述べられているものは少ないと思います。私が考える整理、整頓の理想の姿は次の3つです。
- 管理者(現場を知らない人)でも異常に気がつく
- 現場の人がモノを管理しやすい
- h生産性が向上する
これら3つを挙げる理由を紹介しましょう。
1.指摘できる状態
リバウンドをさせないためには、ルールを体に覚えさせる必要があります。体に覚えさせるために必要なのは、管理者が指摘し、それを現場に直させることです。
現場の細かいルールを覚えていない管理者でも指摘できるようにするには、異常に気がつく整理、整頓のやり方が必要となります。つまり、表示などを徹底的に行う必要があるのです。また、表示にも色を使うなどの工夫が必要です。
2.管理が簡単
整理、整頓ができていないのは、モノの管理が苦手だからです。モノの管理が苦手な職場に、複雑な管理ルールや、管理する場所が多くては、定着するはずがありません。そのため、管理のルールをシンプルにしたり、できるだけ1か所で管理(集中管理)するなど、管理が簡単にしておくことが大切です。
3.歩行が少ない
できるだけ歩行が少なくなるよう作業動線を考え、モノを置く場所を決定しましょう。これは、管理を簡単にする集中管理と矛盾が生じることがあります。集中管理をすれば1回当たりの歩行が多くなりますし、歩行しないことを重視すればモノを手元で管理したほうがよいからです。
その場合は、集中管理を優先にしたほうがよいです。理由は、管理が難しいとリバウンドしてしまい、将来、また、同じように整理、整頓をする必要が出てくるからです。リバウンドして、また、同じことをすることの方が、無駄だからです。
以上の3点を考えれば、職場をどのような状態にすればよいかが見えてくるはずです。