前回の記事で、現場改善をしていく上で身につけて欲しい5つのスキルの中の「ムダの視点」を取り上げました。今回は残りの4つのスキル、「観察スキル」、「ヒアリングスキル」、「業務の洗い出しスキル」、「時間計測スキル」についてみていきましょう。これらのスキルを身につけることで、業務の見方が変わり、業務の無駄に気がつくようになります。すべてのビジネスマンにとって有効なスキルなので、ぜひ習得してください。
目次
観察スキル
観察する際に、次の3つの視点を抑えて現場で行うと、よりインパクトの大きいムダを発見することができます。
生産性を向上させるには、インプットを小さくすることが必要なため、インプットの要素である3M「人(man)」、「機械(machine)」、「材料(material)」に着目します。ペースメーカーとは、仕事のスピードを決めているもので、3Mのうち「人」か「機械」のいずれかとなります。業務を観察し、ペースメーカーが「人」と「機械」のどちらであるかを明確にします。
例えば、ライン作業の場合は「機械」が仕事のペースを決めていることが多いため、少ない「人」数で、長い時間、機械を早く動かすようにする方向で考えます。(ただし、作業者の人数や作業スピードでラインスピードが決まっていることもあるので注意が必要)。
「何のためにその業務をやっているのか」、『目的』を明確にすると、「そもそもその業務は必要なのか」という視点を持つことができ、業務を抜本的に見直すことができます。
また、なぜやっているのか『原因』を考えながら現場を見ると、改善策が浮かぶようになってきます。
例えば、歩行が多い現場で「なぜ歩行が多いのだろう」と考えるだけで、モノの置く場所が悪いのではないか、指示連絡が悪いのではないか、といった原因や改善策が思い浮かぶようになります。
前記事「すべてのビジネスマンに有効な現場改善の基本スキル ①ムダの視点」を参照してください。
ヒアリング能力
現場改善は、現場で得られた情報を元に分析を進めていきますが、解釈が異なっても事実を間違えることが少ない「定量情報」に比べ、事実自体を誤認する可能性が高い「定性情報」は注意が必要です。また、改正案を実行する際にスムーズに進める上でも、ヒアリングを通してコミニュケーションをとっておくことが重要です。
現場のヒアリングをする際には、以下の3つを心がけましょう。
会議室など、現場の人にとってアウェーな場所でヒアリングをすると、急に無口になったり、本音を話さない場合があります。重要なことや話しにくいことを聞く際は、その人の一番安心できるホームでヒアリングをするようにしましょう。喫煙所や休憩室なども有効です。
ホワイトボードやA3のコピー用紙にヒアリングしたことを文字に書き出しながら進めていくと、もし間違って伝わっていたことがあればすぐに修正でき、事実を誤認しにくくなります。
またヒアリングをされる側は、話したことを書き出されることによって、しっかりと受け止められていると感じるため、信頼関係の醸成にもつながります。
経営幹部や管理職の中には「単純作業は誰にでもできる。管理職のほうが大変」という現場軽視の方もいます。しかし、企業活動において、製品やサービスの価値を作り出しているのは、経営者でも管理職でもなく、地道な業務を繰り返している現場の人たちです。そのことを理解せずに現場改善を行っても成果はでません。敬意を払ってヒアリングを行いましょう。
業務の洗い出しスキル
現場改善を行うためには、最初に何にどれくらい時間を使っているのかを明確にすることが必要です。業務や業務プロセスの洗い出しには、次の3つの方法があります。
現場に行って、作業や業務を観察しながらプロセスを洗い出します。この方法は、直接作業を見ることができるため、「改善策のアイデアが出やすい」というメリットがある一方、「観察対象者が多い場合、手間がかかる」というデメリットがあります。観察されていると、対象者が意識して通常とは違った作業方法をとることがあるため、「動画で撮影する」という方法もあります。
洗い出しをする際は、担当者に調査票を渡し、書き出してもらいます。
すべての業務の棚卸を行い、改善対象を決める場合は図①を、既に改善すべき対象が明確になっており、具体的な改善を進めたい場合は図②を使用します。
図①
図②
現場から「どのような業務を行っているかなかなか思い浮かばない」という声が出る場合があります。その際は、業務が完了したら、業務名とかかった時間を付箋紙に書いてもらい、台紙に貼り付けて提出してもらう方法が有効です。日々の繰り返し業務は黄色、急な突発業務は赤など、付箋紙の色を変えることで、どのようなタイプの業務が多いかも分析することができます。
時間計測スキル
嫌なことをやっている時間は長く感じ、好きなことやっている時間は短く感じるなど、人間の感覚はあてにならないため、実際の作業時間を把握することが必要です。時間測定は、ストップウォッチで計測するという簡単なもので、スマートフォンなどで気軽にできます。その際、図④のようなフォーマットに書き出した上で、各プロセスの時間を計測します。短い時間の作業の場合測定誤差が生じやすくなるので、10回前後を目安に測定回数を増やしましょう。
図④
以上が、すべてのビジネスマンに有効な現場改善における4つの基本スキルです。
ぜひご自身の職場の業務を改善する際に活用してください。